Farmers -生み出す人- vol.2 土屋初男さん

 

農家は、アーティストだ。

 

 

食べることは、生きること。

食べることは、暮らしを豊かにすること。

食べることは、未来を作ること。

 

食べるもの、それを生み出す農家さんは、食物をデザインし、私たちの暮らしを彩る。

僕が農家さんを間近で見て感じたことは、農家さんはアーティストだということ。

農家さんの想いが伝われば、暮らしはもっと豊かになる。

 

そんな農家さんに、フォーカスする企画、Farmers -生み出す人-。

 

 

 

 

 

vol.2 土屋初男さん

 

 

 

 

 

 

 

初男さんへの最初の印象は、

 

 

「鉄人」

 

 

だった。

 

 

夏、毎朝大量のスイカと大量のトウモロコシを出荷していた。

 

トウモロコシは、必ず出荷する日の朝、収穫しなければならない。

毎日7時過ぎに100本、200本というトウモロコシを持ってくるには、きっと4時くらいから仕事をしなければならないだろう。

 

さらに、スイカ。

前回も記事に書いたように、1玉10kg以上のスイカを50個100個と持ってくる。これだって収穫して、運んで、トラックに乗せて、降ろして、スイカを拭いて、ネットに入れて、箱に詰めて、またトラックに乗せて、ということをしなければならない。

 

じゃあ?

仮に4時からトウモロコシを収穫して、出荷準備をして、その後スイカをトラックに積んで出荷。

その後昼間(気温は30度を優に越えるというのに)明日分のスイカを収穫して収穫準備をする?

 

7月初旬から8月下旬までほぼ2ヶ月毎日??

 

 

鉄人かな??

頼もしすぎる。

 

 

 

夏が終わり、このインタビュー企画を考えていた僕は、思わず初男さんにインタビューをさせてほしいとお願いしていた。

鉄人の鉄人たる所以を知りたくて。

 

 

 

 

 

千田:

なぜ、農家さんになったのですか?

 

 

初男さん:

元々、家が専業農家だったんです。で、親を見ていて思っていたんです。

「絶対に農家にはならない」って。

きついし、もう絶対にならないって。

で、農業高校で食品化学を勉強して神奈川にある食品会社に就職したんです。

私は長男ではあったのですが、次男と三男がいましたので自分がやらずとも弟たちがいるから良いかと。

 

 

 

 

 

 


初男さんの畑。山あいの、「田原野」というところにある。ちょうどほうれん草が収穫期だった。

 

 

 

 

 

千田:

確かに30年40年前ですと機械も今よりも多くないでしょうし、仕事はより大変だったですよね。

 

 

 

 

初男さん:

3K(*きつい、汚い、危険の頭文字を取って言う)なんていう言葉があったように、農業というのは本当に辛いんですよね。

朝早いし夜は遅くまでですから、やっぱり大変ですよ。

で、サラリーマンを5年弱やったんですが、その時に父が一時入院をしたんですね。関節リウマチというのになってしまって。で、入院中は仕事が止まりますし、退院してもこれまで通り動ける保証も無いという状況になったんです。

その時には弟たちはまだ学生だったので、このままだと生活が成り立たなくなる。

じゃあ、これはもう自分が戻って農業をやるしかないと。

農業をやりたくて戻って来たわけじゃないんです笑

 

 

 

熱意の源

 

 

千田:

ご家族のご事情で、23歳ころから農家さんになられたんですね。

弟さんたちが学校を卒業した時、またサラリーマンに戻りたいとは思わなかったんですか?

 

 

 

初男さん:

その時にはもう思わなかったですね。

農家をやってみてとても面白いと感じたのは、やればやっただけ、工夫したらしただけ結果に早く結びつく、ということだったんです。

サラリーマンで結果、つまり役職が上がるだとか給料が上がるだとか、を得ようとするととても時間がかかりますし、仮に努力しても上司の裁量や自分以外の部分でそれが報われないこともあると思うんです。

でも、農家はやればその結果が善し悪しともに早く分かる、それがとても面白いんです。

そして、若い頃は特にそうですよね。早く結果が得られると、よりモチベーションが上がりますよね。

 

 

千田:

農業をやっていて面白い、と感じる瞬間は今も「良い結果が得られたとき」ですか?

 

 

初男さん:

いい結果、の内容が変わりましたね。

若いころは家族を養わなければならなかったので、収入という要素が大きかったですが、今は「自分の思う理想的な物ができた」というのが何よりも一番です。

農業は物を作る仕事ですから、やっぱり良い物ができることが何よりの喜びですね。

 

 

仕事をする、野菜と向き合うこと、が楽しいし気楽。

 

 

千田:

初男さんは本当に毎日お忙しくされているんですが、お仕事以外ではどんなことがお好きなんですか?

 

 

初男さん:

もう正直仕事してる方が気楽ですね笑

若いころは地区のソフトボール大会に出たりとか、50歳くらいまではゴルフをやったりとかしてましたけどね。

今は特に趣味という趣味も無いですし。雨の日とか家で休んでても次の日の仕事のことを考えちゃいますからね。

いずれにしても、農業って本当にやることが多いんですよ。雨でも。だから、あんまり長く休むっていう考えは無いかもしれないです。

 

 

 

せっかくだから、収穫しますか。と初男さん。ほうれん草って土から抜くんじゃないんですね。

 

 


小さなナイフで根元を切ります。

 

 

 

 


切ったら、小さな茎をちぎります。一羽ずつ。


こんな感じで。

 

 

これを複数束ねて、ようやくスーパーに並んでいる見た目になる。恐ろしい手間だ。

 

 

 

これからの農家

 

千田:

これから若い人が農業をやりたい、と言ったら初男さんはどうお答えしますか?

 

 

初男さん:

まぁ、良く考えたらと言いますかね笑

農業は手がかかりますから、本人、そして奥さんを含めたご家族の覚悟、というのも必要になるかもしれないですね。

そしてこれから始めるのであれば露地よりもハウスですかね。そしてコンピュータで制御するような近代的な設備を使ってやる、というところまで考えないと厳しいのかなと思います。

 

 

千田:

初男さんの1日の時間割が気になるのですが、一体いつからいつまで働いてらっしゃるのですか?

 

 

初男:

時期によってだいぶ違います。

まず生産する作物をだいぶ絞っていますのでそれによってかなり変わりますね。

私は、夏はスイカとトウモロコシがメインで秋は葉物、小松菜やほうれん草ですね、そして冬場は原木のしいたけです。

夏場はとうもろこしの収穫から一日が始まりますから、4時半くらいから仕事が始まります。

明るい時間も長いですし翌日の準備もありますから22時を越えることもありますね。

 

逆に冬場は日が出ている時間も短いですから、6時くらいから17時、18時くらいというところでしょうか。

 

 

 

 

千田:

これからの時期、原木しいたけが出てくるんですよね。僕はまだ食べたことが無いのでとても楽しみです。

 

 

 

初男さん:

伊豆の国を含めた伊豆地域では原木しいたけの生産が盛んですからね。

肉厚でジューシーでそれはとてもおいしいですよ。うまみがたっぷり詰まったしいたけをぜひ召し上がってほしいですね。

 

 

 

 

 

 

編集後記

初男さんは60をだいぶ越えているにも関わらず、毎朝淡々とスイカを、何個も運ばれていた。

同じように大量のトウモロコシも、淡々と。

毎日毎日。

作物には、旬がある。実をつける時期は限られていて、採り終わればまた来年。

初男さんは、旬の時期、2ヶ月弱、毎日毎日市場へ作物を出荷していた。

それはつまりとても広い面積で、多くの作物を作っているに他ならない。

 

口で言うのは簡単だが、それを1人2人でやるとなると話は別だ。毎日早朝から遅くまで作物と向き合わなければならない。

初男さんは、きっと作物とも、自分とも誠実に向き合っているのだと思う。

例え嫌なことでも向き合って、面白みを見つける。それは自分と誠実に向き合った人にしかできないことなんだと思う。

そしてそこから得た「良い物を世に出したい」という想いは、今日も彼を畑に向かわせるのだろうし、

僕が初男さんに感じた「頼もしさ」の源泉なのだと理解した。

 

今はほうれん草に小松菜が真っ盛り。

初男さんの、農家さんたちの想いが詰まった野菜を、今日も届けたい。

 

 

 

 

 

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