イズクラシ、楽しんでます。千田です。
人生で初めて蕎麦の実を見たハナシです。
実は先日、実家の仙台に帰省していました。
娘の七五三写真を撮り、お土産を携えて伊豆へ。
伊豆に帰って来た次の日には、イズデコモリでもお世話になった古屋さんの家へ。
すると、ご自宅の前にブルーシートが敷かれていて、その上には見慣れないものが。
-あら、これは何ですか?
蕎麦の実、だよ。
-soba?
蕎麦。
そう、実は私蕎麦の実そのものだけを見るのは初めてだったのです。
前回のイズデコモリ時には「蕎麦の実をつけた蕎麦」(ややこしい)を初めて見ましたが、こちらはその実だけ。
お米でいう、「籾」(もみ)の状態ですね。
このように「乾燥」させた後、黒い色をしている皮をとって中身を取り出し、それを粉末状にして初めて「そば粉」となります。
そんなに大変な思いをしてまで蕎麦を食べていたんですね。
さて、この浮橋という地域は昔からそばの生産が盛んで、12月には「そば祭り」という地元のお祭りが開催されています。
そこにはなんと1,000人以上の人が市内外から訪れ採れたて打ちたての蕎麦を楽しんでいるそうです。
ということで、その情報が頭に入っていた僕は、なんの気なしに古屋さんにこう言ったのです。
-この蕎麦もお祭りに使うようですか?
ううん、これは自家用。
??
???
-自家用?
そうそう、地区の製粉機があるから、そこで粉にしてね。
-地区の製粉機??(なるほど、それはあるにしても、自分で蕎麦を打つのか?まさかな。いくらなんでもそれはないだろう)じゃあ、製麺所に頼むんですか??
いや、家でうつよ。この辺はみんなそうだよ。
来たー!来ました。すごい文化。
サラリーマン時代に、もし同僚が
「千田さん、僕は毎年年末は蕎麦を自分で打ってるんですよ」
などと言われたら、僕はきっと
「スーパーで買えよ」
となんの感動もなく言ってしまうでしょう。というよりも、おそらく冗談として真に受けない可能性すらあります。
だって、「蕎麦を自宅で打つ」ですよ?
そんな広い台所のあるマンションなんか借りられないでしょ。
でもね、ここは伊豆の国市浮橋地区。
「この辺の家はみんな自分の家で蕎麦を打つ」んです。
なんて素晴らしい文化と伝統でしょう。
先祖代々の土地で、物なりが悪いタイミングで蕎麦を作り、冬季の食料とする。いつしかそれは年を越す時に食べられるようになり、新しい年を迎える際の風物詩となったのです。
今ではすっかりスーパーで買うだけになり、形骸化しかけているこの文化も、ここでは脈々と根付いているのです。
「すげぇすげぇ」とオウムのように繰り返す僕を、古屋さんは不思議な目で見ながら微笑んでいました。それはそうでしょう。
僕にとっては死ぬほど魅力的なそれも、古屋さんにとっては毎年行われる日常なのですから。
-いや本当にすげぇ。でも、どうやって麺を作るんですか?
これがあるからね。
まさかの、
my 製麺機
どこまで僕を驚かせるのだろう、この土地は。
ちょっと料理に凝って買っちゃっで、でも結局ほとんど使われないパスタマシーンとかじゃないんです。
毎年毎年、丁寧に使われている製麺機。
あまりにも驚いた僕、実はこの製麺機は倉庫の入り口にあったのですが倉庫は暗い。写真が撮れない。
驚き過ぎてなんとかこの全容を写真に収めたい僕は
「ごめんなさいごめんなさい少しだけ少しだけ」とまたもやオウムの様に繰り返して外に出し、この写真を撮ったのでした。
しかし、浮橋の日常はさらに僕を襲います。
-凄過ぎますね。じゃあ、ここで麺を作るんですね。…まさか、こ、これで?
そう、これで茹でるんだよ。ガスじゃ火力が弱いからね。
かまどだー!!!
もう、完全にノックアウトされた僕。
冬は蕎麦を刈り、打つ。
季節と、先人の知恵と生きる、もう決して当たり前ではないそれは、ただ僕をノスタルジックにするだけではなく、体を強く、心を豊かにしてくれる方法なのかもしれません。
今はただ見ているだけ、その生き方をほんの少し体験させていただいているだけですが、これからその比重が高まった時に起こる自分の変化がどんなものなのか。
それを考えるだけでこれからのイズクラシにワクワクが止まりません。
イズクラシ、おすすめです。
■浮橋地区へのアクセス
<電車で>
東京から東海道新幹線で三島駅下車
三島駅から伊豆箱根鉄道線で田京駅下車
田京駅から車で約20分
*バスはありますが本数が少ないのでオススメできません。
<車で>
沼津または長泉インターへ。
同インターで伊豆縦貫道に乗り大仁南インターで降りる。
大仁南インターから車で20分ほど。